第1章 殺し屋タヌキ
「一掃出来たようだな」
私が狙っていたターゲットが乗っているだろう車が見えて来た時、青シャツが物騒な事を呟いた。
車の側に誰か立ってる、うへぇ…こいつも同じ顔してる、三つ子か?緑のシャツに黒いスーツに白ネクタイ…神経質そうなやつ…。
「お帰り、お前達にしては珍しいドジ踏んだね」
「フッ…次会ったらミンチにするさ」
「兄さん、ごめんね、ぼくも次はあいつの首を引きちぎるから」
やだわぁ…こいつも物騒だなぁ。
「ま、ボスから全員皆殺しにしたからね、雇われた殺し屋なんて捨て置いてもいいと思うよ」
おぉ…怖い。
はっきりしたのは…タダ働き決定だよ!コンチクショウ!!
『キュ…』
思わず声出ちゃった…。
「何?それ犬?」
緑シャツも犬と間違えてる…本当こいつら揃いも揃って馬鹿なの!?
クッ…我慢…我慢。
「さぁ…?犬なのか?殺し屋が消えた付近で怪我してたから拾ってきた」
「ふぅん、病気とかもってたらどうするの?ほっとけばいいのに」
このクソ野郎、そんなもんもってねぇよっ!!
「大丈夫だろ、後であいつに診てもらおう」
「連れて帰るのはいいけど、お前が面倒みろよな」
「ああ、no problem」
「向こうも撤収したからこっちも撤収するよ、早く車に乗って」
逃げるタイミングがないな…連れてかれる…。
上着に包んだ私を抱えて青シャツが車に乗り込んだ。
「よお、お疲れさん」
向かい合わせの座席に座る人間、こいつも同じ顔!?違うのは赤いシャツに黒いスーツ、四つ子?緑シャツが運転か。
「すまない兄さん、殺し屋を逃がしてしまった」
「どうせ雇われた殺し屋だろ?依頼主はもういないんだ、ほっとけ、ところでそれ何?犬?」
「怪我してるから連れてきた、犬…かな?変わった犬種っぽくて珍しいから飼ってもいいか?」
ハイハイ…もう犬でいいですよ…なんて言うと思ったかっっ!!赤シャツよお前もかっっ!!あんな人間に飼われるペットと一緒にすんな!!そして私を飼うだと、ふざけんな!!ダメだこいつらといたらストレスが溜まる。
決めた…車から飛び降りても逃げる。
化けなきゃいけないけど、逆に驚いてくれた方が逃げるチャンスが出来る、じゃあ耳と尻尾は出した方がいいか。
でも一言言わないと気がすまない…。
ボフンッ!!
「ふざけんなっ!!私は犬じゃない!タヌキだ!!」