第13章 神なんてくそくらえ
フヨフヨと少し浮いているのは錯覚じゃない、本当に浮いている。
今まで見た事もない彼女のその出で立ちに皆が皆呆然とする。
真っ先に我に返ったカラさんがタキちゃんに近付き手を伸ばす。
「タキっ!?熱っ!!?」
彼女の手から青い火の玉がカラさんに向かって飛ぶ。
?『人間ごときが…わらわに触れるでない…』
冷たい眼差しでカラさんやオレ達を見る彼女は全くの別人のようだ、なんだ?誰なんだ?
「おいタキ?お前さぁ、頭打って俺達の事忘れちゃったの~?」
?『わらわはぬしらの事は知らぬ、寝ておったのでな、ぬしらの言うタキは…ふむ…もうひとりのわらわの方じゃな』
フヨフヨ浮きながら足を組んで顎に手をあて思案した後、彼女はそう言った。
もうひとり…彼女は二重人格だとでも言うのか…?
?『もう少しで祟り神になりそうだったんでのぅ、もうひとりのわらわを作ってわらわ自身は寝ておった、もうひとりが瀕死状態になったら起きれるようにしておいたんじゃ♪こんなに早く瀕死状態になるとはのぅ…やはり人間等に関わるとろくな目にあわぬな』
「そ、それじゃそのもうひとりの方は…?タキはどうしたんだっ!?」
?『案ずるでない、わらわの中で寝ておるぞ?わらわが起きたからには寝ていてもらわねば困るのでな…』
「タキじゃないなら…いったいお前は何者なんだ?」
彼女はニヤリと笑う…今までの彼女からは見た事もない笑い方だな…。
?『山神じゃ、人間に奉りあげられたあげくにいらなくなれば捨ておかれた…元山神と言ったところかのぅ』
彼女は窓の方を見ると呟く。
山『黄昏刻か…逢魔が時とも言うのぅ、丁度良いな…顕世(うつしよ)にいても…もうわらわの帰る場所はないからのぅ…』
彼女の呟きを聞いたチョロさんがすかさず聞く。
「ねぇ?君さぁ、どこに行くつもり?まさか僕達の前からいなくなるとか言わないよね?」
彼女は窓へ向けていた視線をチョロさんに移す、なんだか寂しそうに見えるのは気のせいかな…?
山『わらわは力を持つが故に消滅する事はないが、このまま顕世にいれば勝手な人間に対する怒りから…いつ祟り神になってもおかしくないのじゃ…だからこそある程度の力を残して怨みも穢れも、そして人間に興味のない、まっさらなもうひとりのわらわにこの身を任せた』