第1章 始まりの風
あたしを抱きしめるリョーマの腕。
本当にあたしのこと好きなんだね。
あたしはあの頃のあたしじゃないのに。
君は光のように笑うけど、あたしは。
汚れを知らない笑顔なんて忘れた。
優しくてあったかい瞳なんて出来ない。
「リョーマ、あたし氷帝に通うから。」
越「え?!なんで青学じゃないの?」
「もう決めたの。青学には行かない。」
同じ学校に通いたくないわ。
いろいろ面倒くさいし、嫌いだし。
越「…わかった。」
渋々と頷くリョーマ。
あたしは人をさげすむ瞳しか出来ないのよ。
8年で、すべて変わってしまったの。
君は何も変わってないみたいだけど。
越「姉さん、まだテニスやってるよね?
今度一緒にやらない?」
「…どうして?」
越「姉さん強いじゃん。俺より。」
当たり前よ。あたしが強いのは。
でも、もう辞めたの…。
「あたし、テニス辞めたから。」
越「え、辞めたって…どうして?」
嫌いになったからよ、と言うと…。
あんなに強いのにって反論してきた。
強くても、意味がない。
大切な人を守れないと、意味はない。