第2章 帰って来た彼と恋人
『健君?今何て』
『・・ほっといてくれ』
『ちょっと待って!健君!?』
突然彼が水泳部を退部してしまった
個人優勝迄成し遂げ、次は団体優勝だと意気込み毎日朝から夜遅く迄頑張っていた水町は辛そうに顔を歪ませ走り去ってしまったのだ
漸く、彼を名前で呼べるようになった矢先の出来事で水町は何度電話やメールをしても出てはくれず、学校も休んでしまった
『こんな事、今迄一度もなかったのに健君』
彼が部活を辞めた理由は何となく分かっていた、毎日彼の部活の応援に行っていたから
彼と部員達の温度差が日に日に違っていく様子が見ていて不安に感じていた、だけど彼が頑張っていれば部員達もいつか分かってくれると信じていたから、何も言わずに見守り続けていたんだ。
だけど、本当は・・
『どうして、出てくれないの・・健君ッ』
気がつくと、授業中だと言うのに鞄を握り締め教室を飛び出していた
彼を一人に何てさせられない
今一番辛く苦しんでいるのは彼なのだから
だからこそ側にいたい
『健君、お願いだから出て!』
学校を飛び出し彼が行きそうな場所を何ヵ所も探し回ったが見つける事が出来ず、電話にも出て貰えない間に時間はお昼を回ってしまっていた
『・・お弁当、いつも一緒に食べていたのに』
『どうしたの?泣きそうな顔しちゃって』
『!?』
トボトボ歩いていたの目の前には、明るく長めの髪にサングラスといった如何にも怖そうな男の人に声をかけられ、体を硬直させたに、男はサングラスを外し爽やかな笑顔を向けてきた
『可愛いねぇ、中学生だよね?まだ授業中じゃないの?あっ、もしかしてサボり?真面目そうに見えるけど結構遊んでるの~?』
『あ、えっと・・』
満面の笑顔なのに恐ろしかった
弾丸のように立て続けに質問をしてくる目の前の男から何とか逃げたい一心で一歩足を後ろへ引いてみたの腕を、がっしり掴んだ男からは逃がさないと無言の圧を感じさせる
『す、すみません・・私人を探しているので』
『え~誰々?彼氏とかじゃないでしょ?つーかさ、君みたいに可愛い子待たせる奴なんてほっといて良くない?俺と遊びに行こうよ、ね』
『やっ・・』
『すまないが、そいつを離してくれ』
『!?』
『あ~ん、誰だテメェ?』