第2章 帰って来た彼と恋人
だが、人の姿はなく筧が溜め息をついた時だった
背後に僅かな人の気配を感じ振り替えると、出入り口の上に設置された吸水タンクの上に金色の髪を靡かせる長身の男が空を見上げボーっとしていたのだ
『特徴が合致するな。・・おい、一人でいるところ邪魔するが、がお前を探している、連絡を取ってやってくれないか?』
『・・あんた誰?』
『俺は筧・・の幼馴染みだ』
『の?』
『ああ、あいつはずっとお前を探し回っているぞ、何があったかは知らないが、連絡をしてやってくれ。』
『・・お前には関係ないじゃん』
『!?』
目を合わせることなく気の抜けた言葉を投げると、また空を見上げる水町に対し筧は苛立ちを覚える
『関係がないだと?あいつはお前を心配して昨日から連絡をしているんだろ、それを無視するつもりか?』
『ほっとけよ・・うぜぇし、お前』
『・・ッ』
最早我慢の限界だった、筧は吸水タンクへ飛び乗ると水町の胸ぐらを掴み上げタンクへと押し付けた
『もう一度言う、あいつに連絡しろ今直ぐにだ』
『・・って~な!何なんだよ!お前には関係ねぇって言ってんだろっ!』
『俺は無関係だがは違うだろ、あいつは今もお前を心配してるんだ、そんな女の事を何とも思わないのか!?』
その頃、はと言うと・・
『ここにもいない・・』
噴水前でしゃがみこむと、はどうしたらよいのか分からずに頭を抱え込む。
思えば付き合ってから1年になるのに、水町の本心を聞いた事がなかった、いつでも明るく前向きに努力を惜しまない人だから悩んだり迷ったりしないのかと疑問にも感じず側にいただけだった。
『こんなの、彼女だなんて言えないよね・・』
『んな事ねぇーよ!・・ッ』
近くから聞こえてきた探し求めていた人物の声に、弾かれたように顔を上げると、息を切らせながら此方へ近づいてくる水町の姿が目に映る
『健君・・ッ』
『ごめん!・・何度も連絡くれていたのに、全然出れなくて、俺・・自信なくてずっとに応援してもらっていた水泳を勝手に辞めて、に会わせる顔ないし、もしも幻滅されてたらと思うと怖くて・・、すげぇ心配してくれてたのに、本当にごめん』