第16章 近くて遠い恋《3》
「陽菜!?どうしたの!?」
「え?」
お姉ちゃんが部屋に入ってくるのも気づかず、あのままボーっとしていたみたい
「なんで泣いてるの?」
言われて目元を触ると涙が出ていた。
涙が出てることも気づかなかったとは…
「ちょっと目にゴミが入って…流れ出るまで泣いてた。もう取れたから大丈夫!」
目元をゴシゴシ擦る
「…陽菜…大丈夫?家康さんに何か言われた?」
『家康』の名前を聞いて、一瞬反応してしまった。
すぐに首を横に振り、家康に無理しなければ宴に出ていいと許可が出たことを伝えた。
「そう……じゃあ陽菜着替えて!ついでに髪の毛もちょっと弄ろう♪」
別にいいよ。と断ったが、お姉ちゃんが気分転換になるし。と言ったから、お願いすることにした。
お姉ちゃんは泣いてる理由は聞いてこなかったけど、なんとなくわかってるのかもしれない……
でも聞いてこなかったのが、とてもありがたかった。
「できたよ~♪陽菜、可愛い~♡」
髪を二つに分け、それぞれ緩く三編みをし、その二つを後ろで交差させ毛先を耳後ろ辺りでピンで固定し纏めあげた。
「…さすが、お姉ちゃん…手先が器用だね…」
自分じゃできない…
「これくらいなら陽菜でも簡単に出来るよ♪今度教えるから!ほら、着物に着替えて!」
薄紫の生地に、白と桃色の花があしらった柄の着物を着、黄色の帯で締めた。
いつも、明るめの着物を着てるからか、着物の色と髪型を変えただけで、かなり気分も違う。
「じゃあ、宴に行こっか。」
部屋を出て、お姉ちゃんと広間に向かう
落ち込んでたのもお姉ちゃんのおかげで、いくらか元気になった
「お姉ちゃん…ありがとう」
お礼を言うと、お姉ちゃんは安心したようにフワッと優しく笑ってくれた