第16章 近くて遠い恋《3》
「別に……仕事だし……」
……ズキッ……
「じゃあ、俺行くから」
「あ…うん……」
―――パタン…
家康が部屋から出て遠ざかっていく音を聞き、閉まった襖を見て
「……仕事…か…」
最初の頃より、仲良くなれたから、多少心配してくれてるかな…と思ったけど…
「私、だいぶ自惚れちゃってる……」
薬学の勉強も厳しかったけど真剣に教えてくれて
戦場では気遣ってくれて
今も看病してくれて
嬉しかったから
『仕事』って言われると
ショックでしかない
「こんなに落ち込むなんて…らしくないな…」
今までの優しさも全部『仕事』だったのかな……
確かに、最初は信長様の命でだから…やっぱり『仕事』なのかな……
少しでも落ち込むと、考えがだんだんマイナスな方に傾いていき、なかなか気持ちが浮上してこなかった