第15章 近くて遠い恋《2》家康side
襖が開き、中から香菜が出てきた。
「ちょうど良かった。陽菜のこと見といてください。私まだ針仕事が残ってて。」
「陽菜は?」
「寝ています。だいぶ顔色も良くなったから、大丈夫だとは思うんですけど、家康さんの許可が出ないと駄目だから」
「は?」
香菜も政宗さんも、一体何の許可なんだ…
「じゃあ、よろしくお願いします」
香菜は軽く頭を下げて歩いていった。
「…………とりあえず入るか…」
部屋に入ると、陽菜はぐっすり寝ていた。
陽菜の横に座り様子を見る。
確かに香菜と政宗さんの言う通り、顔色はだいぶ良くなっている。呼吸も苦しくなさそうだ。
熱を測ろうかと思ったが、起こしてしまうかもしれないと思い、起きてから測ることにする。
しかし、いつ起きるかもわからない。
しかも、ここは自分の部屋ではないから、時間潰しになる書物などもない。
どうしたものかと文机を見ると、俺が貸していた薬草の本が置いていた。
そう言えば、貸したままだったな。薬草の効能など覚えているが、今はこれを読んどくか……
半刻ぐらい経ったとき、
「……ん…」
陽菜が見動いたのが、目の端で見え
「あ。起きた?」