第107章 恋した記憶、愛した事実《28》混合side
………ド…ク……ド…ク…
「な、何言って……」
「家臣を控えさせるつもりはない。秀吉たちにも今宵は御殿に戻れと言っている。」
……ドク…ドク……
「……秀吉さんたちが居ないのなら、俺は城に残ります。最近のあの娘は、不眠が原因なのか体調も崩していますし……」
「いらん。城に残られて邪魔をされても面倒だからな。」
「邪魔って……あんた、何するつもりで…」
……ドク、ドク、ドク、ドク……
あの娘の部屋の前で、政宗さんの言葉を盗み聞きしてしまったときみたいに、心臓が早鐘を打っている……
なぜか……信長様の口から嫌なことを聞きそうな予感がする……
「夜伽でもなんでもして、存分に疲れさせれば、陽菜もしっかり眠れるだろう」
「……っ」
バンっっ!!!!!
「………あんた…何言ってるんですか!!!」
信長様の言葉を聞いた瞬間、文机を思いきり叩き、信長様の顔を思いきり睨み付ける。
「あの娘があんな目にあったのに、夜伽だなんて……ふざけてるんですか!!」
「なんとでも言え。もう決めたことだ」
「何言ってっ…!!」
「陽菜が夕餉と湯浴みを終えて、四半刻か半刻ほど経ったぐらいに、光秀に陽菜を連れてくるよう命じた。その先は誰にも入らせぬようにする。だから貴様も今宵は御殿に帰れ。これは命令だ。」
「信長様っ!!!」
俺の言葉を遮るように、一方的に話していく信長様。
こんなの納得もいかないし、あの娘をこれ以上傷つけたくない。
「…………なんだ」
「こんなの信長様の命令でも納得いきません!!何か他にやり方があるでしょう!!」
「…………………」
信長様がチラリと俺を見た瞬間、着物の袷を掴まれて、思い切り引っ張られる。引っ張られた反動で信長様との顔の距離がかなり近くなり、眼光を鋭くした瞳に間近で睨まれる。
「……貴様に何が出来る」