第107章 恋した記憶、愛した事実《28》混合side
《家康side》
「……今、何て……?」
朝早くに信長様の遣いから、登城と同時に天主へ来るようにと言われ、すぐさま天主へ向かうと、開口一番に言われた言葉に、耳を疑った。
「陽菜は今宵一晩中、天主で過ごさせる。と言ったんだ。二度も言わすな。」
「天主で過ごさせるって……なぜですか」
もう一度同じことを言われ、俺の聞き間違いではなかったのだと思い、なぜ天主で過ごさせることになったのか、信長様の考えを伺う。
「陽菜が不眠続きで、貴様も毎晩の警護に疲労が溜まっているだろう。安心しろ。今宵は一晩中、陽菜を天主で過ごさせ、陽菜を眠らせてやるから、貴様も気にせず休んでおけ。」
信長様が、俺たちの体調を気にする言い方に、妙に違和感を感じる…
確かに俺だけでなく、秀吉さんたちも前ほどは眠れてはいないけど、あの娘の辛さに比べれば、なんてことはない……
「……あの娘はあんなことがあって、男と二人きりになるのは怖いんです。あんたもわかってるでしょう?」
「あぁ…。だが俺たちには安心している。貴様も何度か二人きりになっているだろう。」
「そうですけど、それは日中だったり、夜中にうなされて宥めているときだけです。基本的に女中も滞在してるし、襖も開けっ放しなんですから、二人きりになってるのなんて、ほとんどないです。」
数日前、政宗さんはあの娘と二人きりになってはいたけど………
あのときのことを思いだすと、また心臓がドクドクと早鐘を打ちそうな気がする……
「………まさか、一晩中あの娘と二人で過ごすつもりですか…?」
信長様のことだから、こう言いつつも、秀吉さんか光秀さん辺りを控えさせているとは思うけど……
「あぁ、そのつもりだ」
……え………………?