第107章 恋した記憶、愛した事実《28》混合side
「……数日前までは、政宗から食欲も少しずつ戻ってきたと聞いていたが……毎晩うなされていて、ろくに眠っていない。不眠続きで、食欲も落ちて体調を崩してもおかしくない。薬を拒むのも、薬で眠らされた恐怖からだろう。」
少し前に、金平糖を分けてやったときは、少し痩せてはいたが、そこまで顔色も悪くはなかったはず……
「たぶんそうだと思います…このままでは、陽菜の体が……せめて、夜にしっかり眠れたら、少しは陽菜の辛さも減って体調も良くなるかと……」
「…あんなことがあった後では、そう簡単には安心して眠ることは出来んだろう……。だからといって、このままの状況もよくないが……食事などに薬を混ぜて眠らせるのはどうだ?」
「それは、家康と政宗も考えたそうなんだが、薬で眠らせるのはやっぱり抵抗があって出来ないそうだ…」
光秀と秀吉の会話を聞きながら、何かいい策がないかを考える。
あの夜の件は、多くの家臣が陽菜の捜索に関与していた。
陽菜が犯されかけたことは伏せているものの、気づいている家臣もいるだろう…
それに、家康の怪我が治ってからも、陽菜だけは御殿に戻っておらず、祝言も保留にしているため、陽菜と家康の今の関係に、疑問に思っている家臣たちは多い…
そのことを不信に思い、よからぬ行動に移されても困る。
何においても、陽菜の安眠と、家康の記憶を戻すことは、早急に手を打たねばならん。
「薬ではなく、自然と陽菜を眠らせればいいのであろう……」
一つの案を思い浮かび、ポツリと言葉をこぼす…
「信長様?」
「……何か考えがあるのですね?」
「……明日の夜、陽菜を天主で過ごさせる……」