第107章 恋した記憶、愛した事実《28》混合side
《信長side》
「新しく傘下に入った大名を調べましたが、特に問題視する必要はなさそうでした。それと、鬼原が治めていた領地ですが、あれから領民たちは平穏に暮らしていました。無理やり搾取された米なども、全て領民たちに戻しております。」
「そうか、ご苦労だったな」
「信長様、秀吉です。」
「入れ」
夜、光秀からの報告を受けているとき、外から秀吉の声が聞こえ、入室の許可を出すと、『失礼します』と言いながら襖が開かれて、秀吉が入室してきた。
「……光秀、安土に戻っていたのか…」
「調査が終わったからな。信長様にも今しがた報告し終えたところだ。……それより、報告しているとき陽菜の叫び声が聞こえたが……」
一刻ほど前に、光秀が報告をしだしたときに聞こえた陽菜の叫び声。
あの夜から毎晩、陽菜の叫び声を耳にしている。
「……あぁ…さっきようやく落ち着いて、眠りについた…今は三成が見張りについている。」
「秀吉、陽菜の様子はどうだ?」
「………正直、日に日にやつれていっています。…ここ数日は、食欲もかなり落ちていて、毎食残しているみたいです…。政宗が、陽菜の好きなものや食べやすいものを頻繁に作っているんですが、ほとんど手をつけていないと……。さらに、体調も崩しているのか、少し熱っぽいようで……家康が一度薬を作ったのですが、陽菜は薬を飲むのを頑なに拒否していて……」
秀吉は、政宗や家康からの情報をまとめて報告していくも、だんだん声が弱々しくなっていく。