第107章 恋した記憶、愛した事実《28》混合side
《姫主side》
「陽菜様、今お茶の用意をしますね。……ん?茶葉の量はこのくらいで良かったかな……?」
「三成、それは入れすぎた。もう少し減らし…あー、減らしすぎだ……お茶は俺がやるから、陽菜に書物を渡してやれ」
秀吉さんは三成くんの手から、茶葉を入れてる筒や急須を取って、テキパキとお茶を淹れてくれる。
「わかりました。陽菜様、お伽噺をいくつかお持ちしました。」
「陽菜、お茶が入ったぞ。熱いから気をつけてな。」
「ありがとう、三成くん。秀吉さんもありがとう。………美味しい…」
秀吉さんから湯呑みを受け取って、数回息を吹きかけて、お茶を飲む。
お茶を飲みながら、秀吉さんから城下でのお話を聞いたり、三成くんには書物の説明をしてもらったりして、三人でお喋りする。
三十分くらいお喋りをして、秀吉さんと三成くんは部屋を出ていった。
秀吉さんは、いつも色んなお話をしてくれて、美味しいお茶を淹れてくれる…
三成くんは、私でも読みやすそうなお伽噺や書物を選んで持って来てくれる…
忙しいのに、毎日時間を作って、顔を出してくれる秀吉さんと三成くん。
秀吉さんと三成くんだけじゃなく、政宗は三食ご飯を作って持って来てくれる…
光秀さんは、急ぎの仕事があるからと、頻繁に安土を離れてるみたいだけど、安土に戻ったときは、毎回顔を見せてくれる…
信長様もすごく忙しいのに、夜中に金平糖を盗み出したときは、いつも少しだけ分けてくださる…
家康も、毎日来てくれて、体調を心配してくれる…
武将の皆だけじゃなく、女中さん達や家臣の方々も、交代で私の傍に居て護衛をしてくれる……
「(……皆、自分の仕事があるのに、私…いっぱい迷惑かけてるな…)」
たくさんの人に、迷惑をかけている状況に辛くなってきた……
早く、あの夜のことを忘れたいのに……
昼間は皆が気にかけてくれたり、お城で働いている人たちの声や音が耳に届くから、忘れられるけど……
「(………夜になるのが……怖い……)」
今は陽が高いけど、あと数時間もすれば夜が来る……
今日は夢に出なければいいのにと思いながら、私は自分の身体をギュッと抱きしめた……