第107章 恋した記憶、愛した事実《28》混合side
ピシャンっ!!!!
安土城の俺の部屋の襖を勢いよく閉め、借りてきた書物を文机に置き、俺はドカッとその場に座り込んだ。
ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ…………
鼓動が落ち着く様子はなく、ドクドク速いまま……
速い鼓動を抑えるように、左胸をギュッと掴む……
どのような道順で部屋へ戻ったのか思い出せないぐらい、先ほどの政宗さんの言葉が、頭から離れない…
「(…あの娘は…奥州に行くんだろうか……)」
いつまでも記憶が戻らない俺のことを諦めて、政宗さんの横で幸せそうに笑うんだろうか……
──大事に使いますねっ!──
「(……あの笑顔は、俺だけに向けてほしい……)」
花のように笑ったあの娘の顔を思いだし、あの笑顔を政宗さんに向けるのかと思うと、焦燥感だけでなく、独占欲も沸き上がる。
──……お前がその態度なら、陽菜を俺の女にさせる。……あとで後悔しても知らねーからな。──
ふと、目を覚ましたときに政宗さんに言われた言葉を思い出す。
あのときは、何でそんなこと…と思ったけど、あの娘への気持ちを自覚している今、いかに政宗さんが本気だったのかを思い知らされ、政宗さんの言葉が、頭からなかなか離れなかった……