第107章 恋した記憶、愛した事実《28》混合side
……ドクッ……ドクッ……
「(…い、今………なんて……)」
…ドクッ、ドクッ……
「……おう、しゅう…?」
「あぁ…」
ドクッ、ドクッ……
「…えっと……奥州って、政宗が治めてる国だよね?」
「そうだ。北国だから、冬になると安土以上に雪が降り積もる。けど春になれば………──」
ドクッ、ドクッ、ドクッ………
早鐘を打ったように心臓がドクドクと鼓動し、政宗さんとあの娘の会話が聞こえないぐらい、その拍動が大きく感じる。
「(……あの政宗さんが、奥州に来いって言うぐらいだ……冗談なんかじゃなく、本気だろう……)」
いつも、思うままに人生を楽しんでる政宗さん。
破天荒で、前線にも真っ先に出陣する、めちゃくちゃな人だけど、将として、もちろん尊敬している。
好き勝手に動いて人を振り回して、無意識に人を惹き付ける。
それに、よく人を見ているから、気遣いも出来るし、人が本気で嫌がってることは絶対しない。
俺には無いものをたくさん持ってる人だ……
城下でも秀吉さんと同じぐらい人気があるけど、特定の女なんか作らなかったし、滅多に女の話なんかしなかった……
だから、それぐらい本気だということだ……
「…じゃあ、俺はそろそろ行く。夕餉作ったら、持ってきてやるから、ゆっくり休んどけよ。」
政宗さんのその言葉に俺はハッとし、急いで部屋から離れようと、早足で来た道を戻った。
「…返事……───」
微かに聞こえた返事を求める政宗さんの言葉が、より本気であることを物語っていて、俺は焦燥感に駆られた。