第107章 恋した記憶、愛した事実《28》混合side
長い廊下を歩き、あの娘の部屋へ続く廊下の角を曲がると……
「??」
何故かあの娘の部屋の前には、護衛の家臣の姿はなく、襖も閉まっている。
「(……不在…?)」
もしかしたら、湯浴みとかに行ってるのかもしれない……
出直そうと思い、あの娘の部屋の前を横切ろうと思ったとき…
「……ありがとう…」
「??」
ふと、あの娘の声が耳に届き、歩みを止めた。
「いっぱいしてもらって…何かお礼しないとね…」
「お礼ねー……」
「(…この声…政宗さんも居たのか……)」
政宗さんが居るのなら、護衛が不在なのは、まぁ納得できるけど……、なぜ襖まで閉めるのだろうか……
疑問に思ったとき……
「………なぁ、陽菜…」
耳に届いたのは、普段の政宗さんの声と違い、そして、戦や軍議のときとも違う真剣な声。
その真剣味を帯びた政宗さんの声に、やたら胸がざわついた……
「??何?」
「……礼はいいからよ…………お前、奥州に来ないか?」
…………………え……………?