第107章 恋した記憶、愛した事実《28》混合side
「(…ほんと……俺のせいだな……)」
俺にしがみついて泣きじゃくっていたあの娘の姿、夜中に恐怖で泣き叫び、眠れなくなるあの娘の辛そうな表情が、頭から離れなくて……
あの日から、あの娘の部屋に行くと、あの娘の目元は泣きすぎて真っ赤になっていて、自身の身体を不安そうにギュッと抱きしめている……
あの娘のそんな姿を見て、何度も何度も胸が痛んだ……
あの娘には、辛くて悲しんでる顔より、笑顔の方が似合ってる…
あの娘の笑顔がもう一度見たいから……
あの娘の不安が取り除けるように、俺に出来ることを、ただひたすらやろうと思った。
「(あの娘の笑顔もだけど、俺自身の記憶もなんとかしないとな…)」
あの娘がそばに居てほしいと願っているのは、今の『俺』じゃなくて、記憶が無くなる前の『俺』だ……
記憶を戻すために、何度も記憶に関わる書物がないかを調べてはいるが、これといったものはない。
新しい書物を何冊か仕入れたと聞いたから、新しい書物の中から、医学に関わっているものを探し、手に取って開いていく。
「(………新しい医学の書物にも、記憶に関係ありそうなことは書かれてないな……)」
パラパラと捲っていくも、記憶に関わることは書かれていないが、新しい知識を取り入れる勉学の為に、その書物を借りることにした。
「(部屋に戻る前に、あの娘の部屋に寄ろう…)」
しっかり眠れていない、あの娘の体調は気になる…
もしかしたら休んでいるかもしれないけど、それだったら後でもう一度行こう。
「(……薬が必要かは…あの娘に聞いてみてからにするか……)」
あの娘の体調を診るために、俺は書庫を後にした。