第107章 恋した記憶、愛した事実《28》混合side
朝になって、秀吉さんから夜中の一連を聞かされた俺たち。
眠っていたときに襲われたから、今のあの娘にとって安心出来る存在が、助け出した俺たちだけなのかもしれないと、信長様が判断し、眠って無防備になっている夜中だけは、俺たちが交代で護衛することになったのだった。
そして、あれから七日ほど経ったが、毎晩あの日の出来事が夢に現れ、その度にあの娘は、恐怖で泣き叫び、だんだん夜に眠るのが怖くなってきているらしい……
夜に寝れない反動で、昼間とかに四半刻から半刻ぐらい仮眠をしているみたいだけど、それでも明らかに睡眠時間は短い…
「(……これ以上寝不足になると、あの娘の体力的にも精神的にも良くないし、眠れるように薬でも作るべきかな……)」
軍議が終わったあと、すぐさま安土城の書庫に向かい、医学関係の書物を手に取っていく。
新しい医学書はもちろん、今まで読んできたものの中に、眠りに効果がありそうな文献がなかったかを、片っ端から調べていくが……
「……調べても意味ないか…」
開いていた書物をパタンと閉じる。
あの娘は理由もなく眠れないわけじゃなく、眠れない原因はわかっているから、たとえ薬で眠ったとしても、不安や恐怖を取り除かない限り、何度も泣き叫んでしまうだろう……
「(………俺の記憶が戻ってたら、何か変わってたんだろうか…)」
相変わらず、戻らない記憶。
記憶がなくなっていなければ、あの娘のそばに居てあげることが出来たし、そもそもこんなことは起こらなかったはず……