第107章 恋した記憶、愛した事実《28》混合side
《家康side》
あの娘が襲われた翌日から、あの娘はふさぎこんでしまい、よっぽどの用がない限り、部屋から出ることはなかった。
信長様の計らいで、部屋から出るときは、どこに行くにも必ず女中が付き添い、部屋にもなるべく女中が滞在するようになっている。
女中の他に部屋に入れるのは、俺たち武将のみ。
軍議や政務、訓練や鍛練などの合間に、誰かが彼女の部屋に行って、様子を見たり、話し相手になったりしている。
特に政宗さんは頻繁に行っていて、食欲が落ちて、少し痩せてきたあの娘のために、食べやすいものやあの娘の好きなものを作っては、部屋に持って行っている。
俺も、痩せてきたあの娘の体調を心配し、時間を作っては、あの娘の部屋へ向かうようにしている。
そして、あの娘の部屋に入るときは、襖は閉めずに開けたまま。
これも、閉じられていると、襲われたときの恐怖を思い出させてしまうかもしれないから、少しでもあの娘が不安にならず、安心して過ごせるようにと、信長様の計らいだ。
そして、部屋の前には護衛として、家臣が一人ついている。
ただ、それは日中の話で、彼女が眠っている夜中だけは、俺たち武将が交代で、護衛している。
その理由は……………