第106章 恋した記憶、愛した事実《27》
家康が襖を開けると、部屋の中央に座り込み、陽菜が自分の体をきつく抱きしめ、女中の腕の中で泣いていた。
女中と秀吉が落ち着かせようと、陽菜の背中を女中が優しく撫で、秀吉は陽菜の頭をゆっくり撫でていた。
襖が静かに開かれる音に、すぐ気づいた秀吉は、顔を上げると家康と目が合う。
「………家康…」
「っっ!?」
家康の名前を聞いた途端、陽菜の肩がビクっと跳ね、震えながらゆっくりと顔を上げ、家康の方を見る。
「…ぅ、っく……いえ…ぅ……や、っ…」
「……っ」
どれぐらい泣いたのか、陽菜の目は真っ赤で、まだ涙は止まることなく、陽菜の瞳からボロボロと涙が溢れている。
陽菜のその表情に、家康は辛そうに眉を寄せ息を飲む。
部屋に入るときと同様、家康は少し躊躇したが、ゆっくりと陽菜のそばに近づき、片膝をつけてしゃがむと陽菜に手を伸ばす。
が……………
「嫌っっっ!!!!!」
パシッ!!
家康の手がだんだん陽菜に近づくにつれ、陽菜の目は恐怖で見開き、思わず家康の手を払いのけた……