第106章 恋した記憶、愛した事実《27》
ザシュッッ!!
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「………………」
家康が、項垂れた鬼原の腕を勢いよく刀で斬る。
鬼原は斬られた痛みで、斬られていない反対の手で、傷口を押さえながらうずくまり、痛みに耐えようとするが、血は止まることなく、ボタボタと流れ落ち、鬼原がいる場所の畳が、血で汚れ始める。
「…はっ……あ、あ……」
痛みでうずくまり、うまく呼吸が出来ず、冷や汗も尋常じゃないぐらい流れ出す鬼原の姿を、家康は冷めきった眼で見下ろしていた。
「お前の汚い欲求のためだけに、俺の大事な娘に触れるな。」
「…ぁ……ぁっ……もっ…申し訳、ぁりまっ…」
「腕だけじゃなく、今すぐお前を全身斬り刻んで殺したいぐらいだ。何度殺しても殺したりないぐらい、お前を殺してやりたいけど、お前を殺したところで、あの娘の心の傷が癒えるわけじゃない。なら、お前の息の根が止まるまで、地獄を見せてあげるよ。」
「……あっ………あ……っ…」
「俺が直々にいたぶってあげるから、簡単に死なないでよね。すぐに死んだら許さないから。」
家康の殺意で充ちた鋭い目つきで睨まれ、鬼原はまともに喋ることも出来ず、全身に力が入らず項垂れた。
その様子を見て、家康は刀を鞘に戻した。
「牢に入れておけ」
家康の一連の様子を静かに見ていた信長。
鬼原たちを一瞥すると、すぐに指示を出した。
いつの間にか、近くに控えていた九兵衛と光秀の家臣たちが、鬼原たちを縛り上げ、部屋を出て牢屋へと連れていった。