第106章 恋した記憶、愛した事実《27》
「「「「「…っっっっっ!!!!?」」」」」
信長の声に、鬼原と従者たちは、ゾッと戦慄が走る。
そして、頬をペチペチと叩いていた鉄扇を、顎下にやり、鉄扇で顎を持ち上げる。
「ひっっ!!!」
「貴様にはずっと不信感を感じていた。俺に気に入られようと、やたら媚びへつらっていて不愉快だ。それに、謁見で城に来る度、女中たちに手を出そうとしていたな。俺が気づいていないとでも思ったか?」
「…そ、そん…な…」
「謀反を起こす様子もなく、年貢も納めていて、特に女中たちも被害にあっていなかったから、そこまで問題視もしていなかったが……貴様は陽菜に手を出した。どうなるかわかっておるな」
「ひっ!ば、罰はっ、う、受けますっ!…で、ですからっ…そ、のっ……い、命だけはっ!!」
「ほぉ…貴様、陽菜に手を出しておいて、命乞いか」
殺意の充ちた冷めきった眼で鬼原を睨むと、鬼原は恐怖で息を飲み、従者たちも信長の纏う殺意にガタガタを身体を震わせる。
「っっ!!」
「ならば、今すぐ殺さずにいてやろう。だが、勘違いするな。貴様らがどれだけの恐怖と苦痛を、陽菜の心と身体に刻んだか。貴様らには、陽菜以上の恐怖と苦痛を、貴様らが死ぬそのときまで与えてやる。その為に生かしておくだけだ。」
「「「「…っっ……!!!!?」」」」
「………ぁ……あっ…ぁ………っ…」
信長が凍てつく眼で、鬼原と従者たちを睨み、信長は鉄扇を鬼原の顎から離し、家康も刀を鬼原の首から離す。
鉄扇と刀が離れた瞬間、鬼原の身体は一気に脱力し、その場に項垂れるが……