第106章 恋した記憶、愛した事実《27》
「秀吉、三成。すぐに陽菜を部屋まで連れていけ」
「「はっ!」」
信長の冷静な声に、秀吉と三成がすぐに返事をすると、秀吉が陽菜を横抱きにして、すぐに二人は鬼原の部屋から出ていき、入れ違いで光秀が部屋の中に入ってくる。
「信長様、廊下に居た者は縛りあげております。」
「光秀、ご苦労……さて…貴様ら、自分が何をしたか……わかっているな?」
「「「「「っっっ!!!!!!」」」」」
信長の低く怒気を含む声を発しながら、冷酷で鋭く睨まれた瞬間、鬼原と従者たちは恐怖でビクリと肩を跳ねあげ、これから自分たちの身に起こることを想像して、ガタガタと身体が震えだす。
なんとかこの場をしのぐことだけを考えている鬼原は、後ろ手をついて家康から少しでも離れようとした瞬間
…………シュッッッッ!!!
「ひっっっっ!!!?」
「少しでも動けば………分かるよね?」
家康が素早く刀を抜き、鬼原の喉元へ向ける。
その刀は、少しでも動けば刀の刃が喉元に触れるギリギリのところで止まっている。
「ほぅ……貴様、この場から逃げれるとでも思っているのか?」
信長が懐から鉄扇を取り出しながら鬼原へと近づき、ペチペチと鉄扇を鬼原の頬へ当てながら、鬼原を見下す。
「…っあ、いえっ……そん、な…こと、はっ…」
信長と家康の二人から、虫ケラでも見るような眼で見られ、恐怖で歯をカチカチならしながら言葉を発する鬼原。
従者たちも、信長たちの纏う雰囲気に圧され、動くことができずにいる。
信長、家康、政宗が鬼原と従者たちを抑え込んでいるなか、光秀は鬼原の荷をほどき、中にある書をパラパラと捲っていき、あるところで捲る動作をピタリと止め、そのまま信長に近づく。