第106章 恋した記憶、愛した事実《27》
「(………………な…………に……?)」
朦朧とした意識のなか、自分の胸元に何か違和感を感じた陽菜は、重たい瞼を、なんとか持ち上げる。
「(……………………こ、こ……は……?)」
うっすらと目を開けると、陽菜のぼやけた視界に、行灯が灯されていない薄暗い部屋の天井が映る。
「(…………ど、こ………?)」
薬のせいで頭が働かず、ここが何処なのかもわからない。
「…………………はぁー、はぁー……」
「(………?……な、に…?)」
自分の胸元から聞こえる息遣いに、陽菜はうっすらと開けている目を、胸元へ向けた。
そこには………
「…………ぇ…?」
鬼原が鼻息を荒くして、自分の胸へ顔を寄せ、胸を舐めたり、揉んでいる姿が視界に入った。
その姿に、陽菜は一気に目が醒めた。
「っ!!?いやぁぁぁぁっ!!」
嫌悪感で全身に寒気が走り、咄嗟に腕を伸ばして鬼原の身体を押す。
「っ!?ちっ!起きたかっ!」
陽菜の叫び声と抵抗に鬼原は舌打ちをして、従者たちの方へ顔を向け
「おいっ!この娘を押さえろ!!」
すぐさま従者に命令し、控えていた従者が陽菜の腕や足を押さえつける。