第105章 恋した記憶、愛した事実《26》家康side
だけど、すぐに鬼原の従者たちの部屋の方へは向かわず、反対側の部屋の方に進んで、立ち止まって小声で光秀さんと会話する。
「………どうやら、鬼原の部屋ではなく、従者たちの部屋に陽菜は隠されてるだろうな…」
「俺もそう思います。そういえば光秀さん、なんで天井なんか見てたんですか?」
「あぁ……おそらく家臣たちは、天井裏は探してないだろうと思って確認していた。埃が落ちていないし、合わせ目も合っていたから、陽菜は天井裏に隠されていないだろう。まぁ、どこぞの忍がよく使用しているから、天井裏が綺麗になっている可能性も高いがな。」
「…………どこぞの忍…?」
途中から一体何の話をしているのかがわからなくなり、怪訝な表情で光秀さんに聞き返す。
「あぁ……あいつのこともだったな。まぁ、このことは今は関係ないだろうから気にするな。それよりも行くぞ。」
「…………………はい……」
なんとなく納得がいかないが、今はあの娘を探し出すことが先決だ。
俺は光秀さんに続いて、鬼原の隣に設けている従者たちの部屋へと向かった。
「お休みのところ、申し訳ない。一通り探したら、すぐに退室させていただこう。」
鬼原同様、猫探しという嘘の理由で、従者たちの部屋へと入る。
造りは鬼原の部屋と同じなので、家具などは一切置かれていないから、隠される場所はやはり限られる。
俺はすぐに、床の間のところに行き、床上の戸棚に手をかけ、戸棚を開ける。