第105章 恋した記憶、愛した事実《26》家康side
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『……ありがとう…ございます。』
警戒していた時に初めて見た、小さく微笑んだ顔……
『は、はい!ありがとうございます!』
目を輝かせて、嬉しそうに優しく微笑んでいた顔……
俺の怪我を、心配そうな顔で、優しい手つきで手当てしてくれた……
怪我が完治して、城に来れば、あの娘が掃除している姿を何度も見た……
話せるときにあの娘と話すという約束も、結局出来なかった……
ごく稀に見せる、不安気で辛そうで哀しい顔……あの表情をされると、俺も辛くて……
ほとんど無意識に、あの娘の柔らかい頬に触れていた………
料理も美味しそうに食べたり、
揶揄されて頬を膨らませたり、
口を尖らせて睨んだり、
あんなに表情豊かだというのも、宴のときに初めて知って……
あの娘に対する気持ちも、あのあと気づいた……
『これ、大事に使いますね!』
軟膏を渡したあと、目元を赤くして、花が咲いたような笑顔に、心臓がうるさく騒いで……
『…………月……綺麗ですね……』
月明かりに照らされた横顔は、今まで見せた表情の中でも、特に綺麗で………
『…ぁ………はぁ……いえ…っ……ぁ……』
口づけの合間に、唇から漏れる彼女の吐息、頬を赤くした色っぽい顔に欲情して……
合間に俺の名前を呼ぶ彼女に、さらに愛しさが沸いた……
『……ありがとう…ございます……///』
口づけのあと、崩れ落ちた彼女を横抱きしたとき、
とろんと蕩けきった顔、ふわりと香る甘いにおい、唇から漏れる吐息に、俺とは全く違う柔らかくて軽い身体に、理性が崩れそうになったのを、必死に繋ぎとめるぐらい、彼女にドキドキした………
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