第105章 恋した記憶、愛した事実《26》家康side
「……………」
「お願いします」
何も言わない信長様に、俺は顔を逸らさずに、信長様の顔を直視する。
早くあの娘を探さないといけないのに、この沈黙の刻が、とてつもなく長く感じる……。
「必ず見つけだせ、いいな。」
「っ!はい。もちろんです。」
「……行くぞ、秀吉。」
「はっ!」
信長様の答えに、俺は頭を下げる。
ひらりと、信長様の羽織が揺れるのが目の端に見え、顔を上げると、信長様と秀吉さんが早歩きで進んでいくのが見えた。
「三成、俺たちも行くぞ。」
「はい!家康様、光秀様、何かありましたらすぐに報告いたします!」
「あぁ、頼んだ。」
政宗さんと三成も、急いで廊下を進み、城門の方へと向かっていく。
「家康、俺たちも行くぞ。」
「はい」
光秀さんに促され、俺は光秀さんと並んで、鬼原たちが休んでいる部屋へ向かった。
「……そういえば、光秀さん。あの報告していた件の続きって何ですか?」
歩き出してすぐに、中断された報告内容が気になり、光秀さんに報告の続きを聞く。
「あぁ………信長様には報告したんだがな。………鬼原が領民から莫大に米を搾取しているのに、領民からは何の訴えもない。おかしいとは思わないか?」
「まぁ、おかしいですね。広間でも言いましたけど、訴えれないように、何かしてるんですよね?」
俺がそう言うと、光秀さんは静かに頷き、足を止める。俺も足を止めると、光秀さんは辺りを警戒し、少しだけ俺に近づく。
「どうやら、鬼原は領民たちの若い嫁や娘たちを人質にとって、自身の屋敷に監禁しているようだ」
「なっ!?」
小声で話された内容に驚き、思わず声が出てしまった。