第105章 恋した記憶、愛した事実《26》家康side
「信長様っ!皆様っ!申し訳ございません……城の中をくまなく探したのですが、陽菜様が見つからず……」
「……そうか。あと探していないところは?」
「武将の皆様のお部屋と、鬼原殿一向の部屋です。城下はまだ探していませんが……」
「鬼原か………」
『鬼原』という名に、この場にいた全員の顔が、あいつの女癖の悪さを思い出して、一層厳しくなる。
「信長様……もしや鬼原が何か……」
「家臣たちがこれだけ探して、見つからないとなれば、その可能性は高いだろうな。鬼原の部屋か他の部屋か…。いずれにしても城内にいる可能性は高いが、城下に連れ出された可能性も捨てきれん。」
信長様の言葉に、秀吉さんの家臣がハッとした表情になり、何かを思いだしたよう。
「………そういえば、秀吉様に言われ陽菜様の部屋に向かっている途中、何か中庭の方から音がしました。何者かが侵入したのかと思い、音の方へ向かいましたが、何者もいませんでしたので、警戒しながらも、すぐに陽菜様の部屋へ向かいましたが……」
「おそらくその隙に、陽菜を部屋から連れ出したのだろうな。」
「では、私が鬼原殿たちが休んでいる部屋に向かいましょう。そこで陽菜がいないか確認してきます。」
「光秀、任せたぞ。秀吉は城に残り、もう一度家臣たちと城中を探し出せ。政宗、家康、三成は家臣を引き連れ城下を探せ。」
「「「「はっ!」」」」
信長様の指示に、一目散に家臣たちが動きだし、武将たちも動きだそうとした瞬間
「信長様」
俺は動き出さずに、信長様を呼び止める。
「なんだ、家康。」
「俺も、鬼原の部屋に向かわせてください。」