第104章 恋した記憶、愛した事実《25》
「…だれっ…んぐっ!!」
助けを求めようとしたとき、後ろからまた口元を塞がれ、今度は離れないようにと、かなりの力で塞がれる。
「(…く、くるし……)」
苦しくて、片腕も掴まれているから、ろくに抵抗も出来ず……
「んんっ…んんっ………」
掴まれていない手で、口元から手を離そうとするけど、それに逆らうように男の力も強くなる………
そして………
「(………何?……急に眠く………)」
急に訪れた眠気。布に眠り薬が染み込まれていたのだと、今になって気づく。
なんとかしたくても、自分の意志とは逆に、瞼がどんどん下がってきて、身体にも力が入らず、意識が遠くなっていき………
「(…………い…えや……す……)」
家康の名前を心の中で呼んだあと、私の意識は完全に途切れた………。