第104章 恋した記憶、愛した事実《25》
パタパタパタ――……………
部屋を出て小走りで広間へと向かう。
幸い、秀吉さんは広間にいているから、廊下を走るな。と注意されることもなく、長い廊下を小走りする。
ドンっ!!
「きゃっ!?すみません!」
「いえ、大丈夫ですか?」
ひとつ目の角を曲がったところで、誰かにぶつかり、少しよろけるけど、ぶつかった人の声と同時に、腕を掴まれて、転けることはなかった。
「あ、ありがとうございます……」
お礼を言おうと、顔を上げた瞬間
「んんっ!!?」
腕を掴んでいる手とは反対の手で、口元を何かで塞がれる。
「(な、何っ!?)」
驚きながらも、ちらりと見えた白い布。それで口元を塞がれてると瞬時に理解して、掴まれていない腕で、なんとか抵抗する。
パシッ…
腕が相手の頬にあたり、顔も横に大きく背けて、なんとか顔から相手の手を離す。
「……チッ…!」
相手の舌打ちする声が聞こえ、目だけで相手を見ると、全く見たこともない男の姿。
一気に背筋が冷え、頭の中で警鐘が鳴り、ドクドク……と鼓動が嫌な感じで速くなる。
広間まではまだ少し離れているけど、大声を出せば誰かに聞こえるかもしれない……
広間の方角に顔を向けて、口を開ける。