第104章 恋した記憶、愛した事実《25》
「陽菜が体調を崩したり、傷を負ったのでな。陽菜の調子が万全に整うまで、祝言を一時的に保留にしただけだ。」
「(信長様……?)」
どうすればいいかわからなかったことを、信長様が代わりに答えてくれた。
だけど、眩暈でふらついたり、火傷は負ったりしたものの……体調を崩したり、傷を負ったわけではないから、信長様の言葉が不思議に思う。
「おや、そうだったのですか。そういえば、本日も病み上がりとおっしゃっていましたし……早く体調が良くなると良いですね、陽菜様」
「は、はい……ありがとうございます……」
とりあえず、話を合わせておこうと、大名の方の言葉にお礼を言って、お茶を一口飲む。
「(……家康、どう思ったんだろう……?)」
お茶を飲んだときに、チラリと家康の方を見た。
だけど、祝言のことを聞いても驚いた様子もなく……普段通りの家康で……
何を考えているのかは、家康の表情を見ても全くわからなかった………。