第104章 恋した記憶、愛した事実《25》
とはいっても、武将の皆はあまり喋らないし、喋っているのは大名の方だけで、なんとも気まずい……
「陽菜様の姉上様にもお会いしたかったのですが…いやはや残念です。」
「は、はぁ……」
しかも、私にばかり話しかけてくるから、気疲れもしてきて、だんだん食事も喉を通らなくなってきた……。
「(……もう、解放されたい…)」
なんとなく、この大名の方は苦手……
最初に廊下で会ったときの、ニタニタと嫌な笑い方が、寒気がして気味悪かった……。
それに、信長様たちも気をつけろって言うぐらいだから、信長様たちにとっても、あまり良い印象は持たれてないのかもしれない……。
こっそりとため息をつくと……
「そういえば、陽菜様と徳川殿のご予定していた祝言の日が過ぎても祝言を挙げていませんが、何かあったのですか?」
「っ!!?」
大名の方の言葉に、心臓が一気に冷たくなっていく………
「(……ど、どうしよう………)」
家康の記憶喪失のことは、武将の皆と一部の家臣さんと女中さんしか知らないこと……
それに
家康には、私とは恋仲で祝言を挙げる予定だったということは話していない…………
こんな形で、家康に知られるとは思わなかった…………