第104章 恋した記憶、愛した事実《25》
あのあと、秀吉さんに部屋まで送ってもらい、すぐに女中さんと家臣さんを呼んでくれた。
女中さんには秀吉さんの御殿に行くための用意を手伝ってもらい、家臣さんは謁見が終わるまでの間、部屋の前で見張りをしてくれたので、1人になることはなかった。
だけど、謁見が終わると秀吉さんと三成くんが部屋に来て、広間で一緒に夕餉を摂るから、そのときに大名の方が私に会えば満足するだろうからとのことで、この時だけ我慢してくれ。と二人に言われ、広間で武将の皆と大名の方たちと夕餉を摂っているんだけど………
「なんともお美しい!ささっ!陽菜様!是非ともお酌させてくだされ!」
「あ、いえ……今日は………」
大名の方は、かなりグイグイとお酒をすすめてくる。
秀吉さんに、なにがなんでもお酒は飲むな。と言われてあるから、なんて断ろうか考えていると……
「陽菜は病み上がりだ。酒をすすめるな」
「おや、そうでしたか。それは残念です。ですが、またの機会に。」
「……は、はぁ………」
今日は上座に座れと言われて、大人しく信長様の隣に座っている。
信長様がピシャリと断ってくれたので、そこからはグイグイと来ることはなかったけど、なんとも気疲れのする夕餉になっている。
「(………そういえば、皆も今日はお酒飲んでない…)」
いつもならこういう場では、少しは嗜んだりしているけど、今日は信長様や光秀さんまでも、すすめられてはいるが一滴も飲んでいない。
「(………このあとも軍議とか仕事があるのかな?)」
それなら飲んでいないことにも納得がいく。そんなことを思いながら、御膳に乗っている煮物を口に入れた。