第104章 恋した記憶、愛した事実《25》
「……なに?鬼原が勝手に来ただと?」
秀吉さん達と一緒に天主へ向かうと、すぐに秀吉さんが先ほどのことを信長様に伝える。
「はい。隣国に用があると言っていますが、恐らくは織田家ゆかりの姫君に会いたい。とういうのが本当の理由でしょう。以前の謁見でも会わさないようにしていましたから。」
「………面倒な男だ」
「陽菜が目的なら、なんとかして陽菜に近づこうとして、あわよくば……なんてことを考えているでしょうね。」
「え………」
光秀さんの言葉に、全身がひやりとして……一気に血の気が引いていく。
「あの男なら、そういう下心しか頭にないだろうな。なるべく陽菜はあの男に近づかず、奴が帰るまでは決して1人になるな。」
「は、はい……」
「政宗たちにも伝えろ。まもなく夕刻で直に陽も落ちる。夜には出歩くことが出来んから、恐らくは城にも泊まるつもりで来ただろうな。仕方ないが奴等の夕餉も用意させろ。」
「承知しました。」
「陽菜、夕餉が終われば、家臣を連れて秀吉の御殿に行け。今日の夜は城より秀吉の御殿の方が安全だ。今すぐ荷物の用意をしておけ。秀吉、一緒に部屋に行け。」
「御意。行くぞ、陽菜。」
「はい……失礼します…」
信長様が的確に指示を出して、私は秀吉さんと一緒に天主を後にした。