第104章 恋した記憶、愛した事実《25》
「秀吉様っ、光秀様っ!こちらでしたかっ!」
秀吉さんと光秀さんが廊下に上がって、信長様のいる天主に向かおうとしたとき、二人が向かおうとした進路の反対側から、三成くんが慌てた様子で秀吉さん達に近づく。
「三成?どうした?」
「何かあったのか?」
いつもは冷静に物事を判断する三成くんの慌てた様子に、秀吉さんと光秀さん何かあったのかと、険しい顔つきになる。
「それが……」
三成くんが言いにくそうに、続きの言葉を発しようとしたとき
「豊臣殿に明智殿。どうもお邪魔しております。」
「「!!?」」
従者の方を数人引き連れ、話し方は柔らかく話しているが、ニタニタと嫌な笑い方をしている、丸々と太っている中年男性が、光秀さんと秀吉さんに声をかけた。
「(………誰だろう…?)」
信長様の気まぐれで、たまに謁見に出席したことがあるけど、そのときにお会いしたことがある大名の人ではない。
「……これはこれは、鬼原殿……。お久しぶりでございますね。」
「……なぜお前がここに…?謁見や城に訪問してくるなどの話は聞いていないが?」
光秀さんが男性に丁寧に挨拶をするけど、秀吉さんは険しい表情で男性を見る。
「明智殿はお久しぶりでしたね。いや、たまたま隣国に用がございましてね。その帰りに安土に寄って信長様にご挨拶でもと思った所存でございます。突然に訪問してしまい、誠に申し訳ありません。」
ニタニタと笑いながら、頭を少し下げる男性。
男性が頭を下げると、従者の方たちも頭を下げていく。