第104章 恋した記憶、愛した事実《25》
光秀さんの手が、頭から離れると
「光秀!お前はこの数日どこに………って、陽菜!またお前は無理して掃除をしてないだろうな!?」
廊下から秀吉さんの注意する声が聞こえ、草履を履いて中庭まで降りてきた秀吉さん。
「秀吉さん、無理してないよっ!ちゃんと休憩もとってるしっ!」
「ん。だが無理は絶対するなよ。で、光秀、お前は今まで何処にいてたんだ!?」
頭を優しく撫でながら、私の返答に納得したのか、口元を緩める秀吉さん。だけどすぐに光秀さんの方へ顔をしかめて振り向く。
「俺は仕事で安土を離れていただけだ。信長様に報告しにいく途中で、陽菜に会って話をしていたところ、お前に捕まった。」
「あぁ!!?なんだとっ!?そもそも陽菜の邪魔せずに、なぜすぐに信長様に報告しないんだ!!」
「ひ、秀吉さん!落ち着いて!!」
涼しい顔をしている光秀さんに、秀吉さんが眉間に深い皺を刻んで、今にも光秀さんに掴みかかろうとしているのを、慌てて止める。
「ほ、ほらっ!秀吉さんも仕事の途中なんじゃないの!?」
「ん?あぁ…俺も信長様に用があってな。光秀!お前も来い!お前は放っとくと、すぐに何処かへふらつきに行くからな!」
「お前は、俺がさっき言ったことをもう忘れたのか?信長様に報告しに行く途中だったと言っただろう。」
「つべこべ言わず来い!!じゃあ陽菜、決して無理はするなよ。」
「あ、うん。行ってらっしゃい。」
秀吉さんが光秀さんの襟元を掴み、引っ張りながら廊下まで歩くのを、手を振りながら見送る。