第104章 恋した記憶、愛した事実《25》
「っ!!!……なっ!光秀さんっ……脅かさないでください……」
肩を叩かれて、ビクリ!と大きく肩を跳ねた陽菜。
いきおいよく振り向いて、叩いた人物の顔を見て驚き、そして安堵の息をこぼす。
「お前が、かなり呆然と掃き掃除をしていたからな。意識を戻してやっただけだ。」
「へ?…………っ!!?………あ、ありがとうございます……」
光秀に『掃き掃除』と言われ、自分の足元などをキョロキョロ見ると、竹箒を持っているのに全く綺麗になっていない中庭が視界に飛び込み、気づかせてくれた光秀に陽菜は礼を言う。
「礼には及ばん。にしても、この前の宴の翌日から、呆然としていることが増えたな。」
「へ!!?」
「秀吉が騒いでいたぞ。また一日中働き詰めでいるのか。とな」
「…………」
陽菜は黙り、顔を俯ける。
引き続き、女中たちの手伝いはしているのだが、秀吉に注意をされてからは、少しだけ女中たちの手伝いを控えめにしている。
とはいえ、世話役の仕事もしつつ、女中たちの手伝いもしているので、働き詰めであることには変わりない。
だが、働き詰めで呆然としていたわけではなく、別の理由で呆然としていたのである。
その理由は
宴のときに、家康と口づけしたこと。