第103章 恋した記憶、愛した事実《24》混合目線
前にも貰ったときのことを思い出していると
「………何泣いてるの…」
「え……?」
家康の声にハッとして、指先を目尻にあてると、少し濡れていた。
「え?あっ……ごめんなさいっ!!」
気づかない内に流れていた涙を、ゴシゴシ!と手の甲で目を擦り、涙を急いで拭き取る。
「(……どうしよう…すごく………嬉しい…)」
あのときと関係は違うけど、家康が自分のために作ってくれたのが、本当に嬉しくて……
しかも、思い出のあるものを作ってくれて、渡し方も似ていて……
お礼の口づけは出来ないけど、家康の優しさを感じれて……嬉しすぎて、手の甲で擦っても、ジワジワと涙がわきあがる。
止まらない涙を手の甲で擦っていると、急に手の自由が利かなくなり、代わりに……
「そんなに擦ると余計に赤くなるよ」
家康の指によって、涙が拭われていた。
「……家康…さん………」
「さっきも言ったでしょ…。あんたは笑った顔の方がいいって。」
家康は優しい声音で喋りながら、目尻に溜まっていた涙を指で拭っていってくれる。
その優しい手つきに、ドキドキとときめいて…それに安心を感じて、自然と涙が止まっていき、涙が止まると、家康の手が離れていった。
「………あの…ありがとう、ございます。」
私と話をしてくれたこと
軟膏をくれたこと
涙を拭ってくれたこと
優しくしてくれたこと
それらの気持ち全てを込めて、お礼を言う。
「これ、大事に使いますね!」
ギュッと大事に入れ物を持って、家康に笑顔であのときと同じ言葉を伝えた。