第103章 恋した記憶、愛した事実《24》混合目線
「驚いたか?」
見ると、政宗さんがニヤニヤと意地悪い顔をしている。
右手には器、左手には器をたくさん乗せたお盆を持って。
「…………なんですか……政宗さん…」
「珍しく、お前の呆けた姿が見えたから、ちょっと驚かしただけだ。えらい酔ってるみてーだな。ちょっとは酔い醒ましになっただろ?」
「………おかげさまで、すっかり醒めました。」
「そりゃ良かった。これ、お前の席に置いとくぞ。」
言いながら、持っていた器をお盆の上に戻す政宗さん。
「なんです?それ。まだ料理作ったんですか?」
なかなかの品数が御膳に乗っていたし、途中で大皿のものまで出していた。どれも美味しかったから、箸も進んで完食はしたが……流石にあれだけ食べれば満腹になる。
「流石に料理はもう出ねーよ。これは甘味だ。前食ったぷりんだよ。」
「あぁ……あれですか。」
あの娘の火傷の手当てをした翌日に、軍議の休憩に出された甘味。
政宗さんの説明によると、なんでもあの娘が作ったもので、南蛮の甘味らしい。ということ。
なんで、あの娘が南蛮の甘味を知っているのか、かなりの謎だが、信長様たちはその事に対して気にした様子もなく、新しい甘味に舌鼓を打っていたのを思い出す。
「俺と陽菜で作ったんだ。味わって食えよ。」
『俺と』の部分をやたらと強調して言ったことに、ピクリと反応して、静かに政宗さんを睨む。
だけど、政宗さんは臆することなく、そして睨み返すこともせず、ただ俺を見ていた。