第102章 恋した記憶、愛した事実《23》
《信長side》
家康と陽菜が時間差で広間から出ていったのを見届け、手酌をして酒を流し込む。
「(さて……どうなるか……)」
先ほどの行動で、家康が陽菜のことを意識しているのはわかった。
陽菜との関係はしっかりとは明かしていないが、自分のとった行動で、少しは何か気づいたかもしれんな……
そう思いながら、また手酌しようと銚子を傾けようとしたとき
「信長様もお人が悪いですね。」
横から違う銚子で酒を注がれ、注いだ人物の方に顔を向ける。
「それは貴様もだろうが、光秀。」
注がれた杯を口へ運び、酒を流し込むと、空になった杯を光秀に向けて酌を促す。
「ククク……陽菜もですが、家康の反応は、本当に面白いですね。」
酌をしながら、先ほどの家康の反応を思い出して笑っている。
陽菜を揶揄いつつ、家康の反応を見て楽しんでいた男。
まぁ、それは俺も同じだが。
「しかし、あぁも意識しているのに、何も思い出せないとは……どうなさいますか?」
揶揄いつつも、こやつなりにあの二人のことを気にかけているのだろう。
「………意識しているのだから、その内、家康が行動を起こすだろう。しばらくはあやつが行動を起こせるよう、きっかけ作りをしつつ、様子見だろうな……」
何も出来ず、ただ二人を見守るだけしか出来ないことが歯痒く、二人が出ていった方へと目を向け、酌をされた酒を流し込んだ。