第102章 恋した記憶、愛した事実《23》
怒気を含んだ声と後ろに引っ張られたのに驚き、きつく閉じてた目を開けると、視界の端に捉えたのは……
「(………い…えや、す……)」
家康の横顔が、後ろ側から少しだけ見えた。
後ろから家康に引っ張られたから、その勢いのまま、体は家康の左腕だけで抱き締められ、家康の右手は私の顎を持ち上げていた、信長様の左手の手首を掴んでいる。
そして、顔は横顔だからはっきり見えないけど、かなり怒っている。
「………本能的に動いたか……」
「…………」
信長様は面白そうに家康を見るけど、家康は返事をすることなく、ただただ信長様を睨み付けている。
「(ど、どうしたら…っ!)」
家康が一方的に睨んで、信長様はそれを気にしていない様子の状況を、口を挟むこともどうすることも出来ず、ただただ見守っていると、信長様は私に近づくのに前屈みになっていた体勢を元に戻した。
それを見て、家康の手が信長様の手首を解放すると、私の体からも手を離して、家康は上座を退き、広間からも出ていった。
私は、家康に声をかけることも出来ず、その様子をただ見ていた。
「陽菜」
「えっ!?は、はい!!」
「行ってこい。」
クイっと家康の方へと顎を向けた信長様に、「はい」と返事をして、立ち上がって家康を追いかけようとしたとき
「陽菜」
呼び止められて、信長様の方へ振り向くと
「ちゃんととっておけよ。」
信長様の指先が、さっきみたいに、トントンと唇の端を叩いて指摘される。
「!!~~~っ……///」
その行動で、瞬時に顔は熱くなる。
急いで指でプリンを拭って、指についたのを舐め、ペコリと頭を下げて、私は広間を後にした。