第102章 恋した記憶、愛した事実《23》
「ごめん!政宗!手伝わなくて!」
「陽菜、丁度いい。これ信長様に渡してくれ。ついでにお前にも。」
そう言って、お盆の上に乗ったプリンを二つ、私に渡す政宗。
「え?いや、皆に渡してまわるの手伝うよ!量多いし……」
「んなもん、女中がやってくれてるから気にするな。それより、さっさと信長様に渡してこい。」
「う、うん……」
政宗に肩を叩かれ、プリンを持って上座へと引き返して、信長様にプリンを一つ渡す。
「信長様、どうぞ。抹茶味のプリンです。」
「ほぅ……。先日のも美味だったが、抹茶のものもあるのか。」
信長様が、匙で一口掬って口に入れる。数えるぐらいの回数を咀嚼して飲み込むと
「なかなかではないか。」
口元を緩めて、満足そうに笑ってくれた。
その表情を見て、安堵から胸を撫で下ろす。
「信長様のお口に合って良かったです。」
味わいながらプリンを食べる信長様を見て、私も匙で掬って口に入れる。
濃厚な抹茶の風味が口いっぱいに広がって、頬が緩む。
すると、信長様がフッと笑うから、どうしたのか聞くと
「そういうところが、童と言われるのだろう。」
「へ?どういうところですか?」
全くわからず首を傾げると、信長様が指で自分の唇の端を、軽くトントンしながら
「付いてるぞ。」
プリンが付いていることを指摘された。