第102章 恋した記憶、愛した事実《23》
信長様の左横にお姉ちゃんが座っているから、その反対側に座り、銚子を傾けて、信長様にお酌をする。
「ずいぶん、光秀と政宗に揶揄われていたな。」
「ふふ……光秀さんと政宗、生き生きしてたね。」
ずっと見ていたのか、信長様も口元に笑みを浮かべていて、お姉ちゃんも手で口を隠して、クスクス笑っている。
「……信長様もお姉ちゃんも…、笑わなくたっていいのに……」
「クスクス……ごめん、ごめん。」
あのやり取りを、ずっと見られていたのかと思うと、恥ずかしさで、顔に熱が集まっていく。すると、信長様はフッと笑って、お酒をクイっと一気に流し込み、次はお姉ちゃんに杯を差し出した。
「貴様もだが、そういう反応をするから、あやつらは揶揄いたくなるのを、そろそろ覚えろ。」
「………え?」
貴様“もだが”………?
光秀さんたちに揶揄われてたのは、私だけだったのに……
信長様が、なんでこういう言い方をしたのか気になって、信長様を見ると、面白そうに広間を見ていた。
だけど、すぐに視線がお姉ちゃんの方に向けられたから、信長様が誰を見ているのかは、わからなかった……。
「香菜、秀和を秀吉に任せて大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫です。御殿に居るときは、秀吉さん、積極的にあやしたりしてくれるんですよ。それに、信長様たちとは、久しぶりに会えるんだから、気にせず宴を楽しんでくれって。」
「なるほどな。香菜の言う通り、秀吉もしっかり父親をしているようだな。見てみろ。」
そう言う、信長様の声に、お姉ちゃんと一緒に視線を秀吉さんに向けると、秀和くんを抱っこして、一生懸命あやしている。
そして、その横には、ニコニコと天使な笑みを浮かべる三成くんと、不思議そうに秀和くんを見ている家康の姿が。