第11章 動き始めた恋心〈9〉家康side
そう言えば、陽菜が頑張ってたの、まだ褒めてない気がする。
今言わないと、安土に帰ったら余計言えない…
「陽菜……」
「?なに?」
…意を決して……
「救護……初めてにしては、頑張ったんじゃない…」
「お疲れ」
そう言って
陽菜の頭を撫でた。
「………ありがとう…」
陽菜が顔を俯かせる直前、赤くなった顔と涙が出そうになった瞳が見えた。
それを見た瞬間、
無性に抱きしめたいと思った
「家康のおかげだよ…」
涙まじりの声が聞こえ、陽菜が涙を溢す前に
「別に…あんたの頑張りでしょ」
抱きしめたい衝動を抑え、陽菜の目元の涙を指でそっと拭った
素っ気ない言い方しか出来ないけど、誰よりも陽菜のことを褒めてあげたい。
そう気持ちを込めた………
「戦に勝ったし、負傷兵達の手当ても一通り終わったし、そろそろ帰支度しときな。帰支度できたらもう安土へ戻るし」
「うん」
陽菜の初めての戦は、無事に事なきを得た。
これで、陽菜は安心して眠ることができるだろう。
それが何より、俺は嬉しかった。
あと、陽菜のことをこんなにも惹かれるとは思わなかったが……
こうして俺達は安土へ帰っていった。