第102章 恋した記憶、愛した事実《23》
「(まさか用が、作ったプリンの試食だとは思わなかったけど……でも、あのときの政宗、一瞬だけ、表情が曇ってたような……?)」
だけど、名前を呼んだら、いつもみたいにニカっと笑っていたから、見間違いだったのかもしれない。
「(そのあとも、政宗は普段通りだったし……。私の気のせいだったのかも。)」
そんなことを、思いながら、政宗に言われた通り、蒸しすぎないように鍋を見る。
だけど、まだ出来上がらないので、出来上がるまでの間、鍋にも意識を向けつつ、女中さんたちの邪魔にならないように、少しずつ使われていない調理器具を片付けていく。
「(あ、そろそろかな?)」
できるだけの片付けを終えて、過ぎた時間の感覚から、そろそろプリンが出来上がる頃だと思い、盛り付けをしていた政宗を呼んで、二人で蒸し器に向かう。
「大丈夫そうだな。」
「うん!上手く出来て良かった~♪」
無事にプリンも出来上がっていて、胸を撫で下ろし、政宗が器を取り出して、氷水のなかに出来上がったものを入れていく。
一度に全部は蒸せないから、これをあと数回繰り返し、全て蒸し終わると、プリンを冷やしている間に、政宗と二人で天ぷらを揚げ始めていった。