第102章 恋した記憶、愛した事実《23》
トントントントン…………
グツグツグツグツ…………
安土城の厨は現在、大人数によって、様々な料理の音を立てていた。
「政宗!切った野菜ここ置いとくね!次は?」
「おう!次は、茹でた玉子の殻剥いてくれ。剥いたら全部鍋に入れて鶏と煮てくれ。」
「うん。わかった!」
政宗の指揮のもと、女中たちや料理番の人間は、釜戸に向かったり、材料を切ったりと、忙しなく手を動かして、あと一刻半もすれば始まるであろう、宴に出す料理の準備に追われていた。
もちろん陽菜も、大量のゆで玉子の殻を剥くために、黙々と手を動かしている。
「(……給食のおばちゃんになった気分…)」
家康の快気祝いだけなら、内々だけでしていただろうから、ここまでの量にはならない。
だが今回は、香菜の出産祝いも兼ねてる宴のため、戦が終わった後に行われる宴並と匹敵するぐらいの量のため、陽菜がこう思っても仕方ないことである。
そんなことを思いながら、陽菜はひたすらゆで玉子の殻を剥いて、全て剥き終わると、政宗に言われた通り、捌いてもらった鶏肉と一緒に鍋に入れて、味付けをし、火にかけた。