第101章 恋した記憶、愛した事実《22》
久しぶりに見た、家康のそういう表情に……
…ドキっ……
胸が高鳴って、トクトク……と、少しずつ鼓動が速くなる。
目尻を拭ったあとも、家康の手は頬に触れていて、触れられてる部分から、じわじわと、熱を帯びていく。
「……い…え、や……」
もう、悲しいなんて気持ちは、どこかに飛んでいって、今はただただ、どうしていいかわからず、思わず家康の名前を途切れ途切れに言うと………
「…っ…!!」
家康は、ハッとした様子で、目を見開いて、頬に触れていた手を降ろすと、気まずそうに、顔を逸らした。
「「……………」」
どことなく気まずい雰囲気が漂い、どうしようか考えてると……
「………とりあえず、これからは、あんまり無理しないようにするんだね。」
気まずい雰囲気を破るように、家康が早口で喋り終えると、すぐに家康は立ち上がって、襖に手をかける。
「え、あ…」
「それじゃ…」
パタン……
私が返事をする前に、家康は部屋を出ていった。