第101章 恋した記憶、愛した事実《22》
痛んだ胸に引き寄せられるかのように、顔も俯いていく。
目覚めたとき、あんなに私のことを警戒していた家康が、手当てをしてくれただけでも、嬉しいことなのに……
「(嬉しいのに……なんだか悲しい…)」
自分で勝手に期待しただけ……
だけど、期待していた分、違ったときのショックは大きい……。
その気持ちのまま、自分の膝上に置いた手、家康に包帯を巻いてもらった手を、ただただ、見ていると
「……だからさ………」
家康の呆れたような声。
それと同時に、私の頬に触れる家康の手。
声と手に、導かれるように、ゆっくり顔をあげると
「あんたの……そういう顔………」
「……え…?」
私から目線を外している、家康の表情が、どこか辛そうな顔で……
家康の目線が、ゆっくり動きだし……
「……あんたの、そういう悲しそうな顔…………。
俺は見たくない。」
その言葉と同時に、家康の翡翠色の瞳と、目線がぶつかった。