第100章 恋した記憶、愛した事実《21》家康side
確かに見かける度に、廊下を雑巾掛けしてたり、庭を掃き掃除してたり、花に水やりをしてたり……いろいろと動きっぱなしだった気がする。
……無理してるんじゃないかと、少し気になってたし…
「………わかりました。光秀さんの部屋に行ったあと、診ておきます。」
そう告げると、秀吉さんと三成は、安心したように笑みを浮かべた。
「なら、頼んだぞ。陽菜に部屋で休むよう言ってるからな」
「わかりました。」
秀吉さんにぽん。と肩を叩かれ、二人は俺が来た道を歩いて行った。
そして俺も、また歩きだしたとき、ふと気づく。
「(……そういや、あの娘の部屋…どこか知らない……)」
手当てして貰ってたときは、当たり前だが俺の部屋に来ていたし、俺も聞く理由がなかったし……。
誰かに聞こうにも、俺の記憶がないことを知ってるのは、ごく一部の人間だけだし……。
「(仕方ない、光秀さんに聞くか…)」
だけど、あの光秀さんが素直に教えるだろうか……何か条件とか付けてきそうだし………
秀吉さんたちに聞こうと思い、振り返ったが、もう二人の姿は見えなかった。
「(やっぱり光秀さんに聞くか……)」
そう決めて、また光秀さんの部屋に行くために、悪戯に邪魔されないよう慎重に、俺は歩きだした。