第100章 恋した記憶、愛した事実《21》家康side
前から、秀吉さんと三成が話ながら歩いてきていた。
二人も俺の存在に気づき、秀吉さんは片手をあげて「よぉ」と声をかけてきて、三成は苛立つぐらいの満面の笑みを浮かべている。
「家康どうした?今日は軍議はないだろ?」
「……光秀さんに頼まれてた薬を作って、渡しに来ただけです。」
「光秀に頼まれた薬だぁ?またあいつは勝手なことしてんじゃないだろうな」
毎度の光秀さんの勝手な行動に、ぶつぶつと文句を言う秀吉さん。
「さぁ?諜報の際に使うって言ってましたけど。」
「全く……後で問いただすか…」
ならば、その場に居合わせないように、光秀さんに渡したら、早急に御殿に帰るか。
そう思い、「それじゃ…」と言おうとしたとき
「あ、家康様。」
なぜか、三成に呼びかけられた。
無視しようと思ったが、秀吉さんも居るし、やいやい言われそうだから、不機嫌になりながらも「何?」と一応答える。
「先程、陽菜様と秀吉様と三人で、廊下の後片付けをしていたのですが、どうやら陽菜様、眩暈が起きたそうなんです……。何かお薬を処方していただけないでしょうか?」
「は?眩暈?」
「あぁ、陽菜の奴、掃除したあとに眩暈が起きて、廊下に桶を倒して水浸しにしちまったんだ。そのとき、顔色が良くなくてな……。ここ連日、朝から晩まで働きづめだったから、それでだと思うが…一度診てやってくれないか?」
秀吉さんと三成の心配そうな顔が、俺をじーっと見てくる。